Sunrock!!

恐竜好きが描くキャププレ

イントゥデリリウム:プレイボールSS

倉橋×谷口 腐り気味注意!!!(勝手にプレイボール3rd)
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 今日は暑い。部員達は少しの練習でぐったりしている。俺と谷口、それに墨谷二中出身はピンピンしているっていうのに、なんてザマだ、なんて言ったら、反感を食らい、また面倒なことになるな、なんて思いながら、汗を拭う。
「さぁ、みんな、じっとしてると余計暑くなるから、柔軟運動に入るぞ!」
部員達は「え〜・・・」の一言も言わずに谷口の声に従う。
よくもまぁ、こんなに素直になったもんだ。休憩時間はかなり短くなったし、まだ息が整ってないので、ちょっと待ってよ、位は言ってもおかしくないとは思う。ま、そんなこと言ってる俺も、谷口のやり方にはもう慣れてしまっている。
頑張る、頑張るね、いいじゃないの。お前らしくてさ。

柔軟運動をする時の、地面からの反射熱。に加わる土、の、柔らかな感じ。
小さな頃、こういう運動場の地面の表面の砂を払い、無防備だがとても硬い地面を踏んで遊んだことを思い出す。
夏っていうのは、最初は誰もが浮かれ、降り注ぐ暖かな光を全身に浴び、楽しむのだが、その光に飽きると突然見捨てられて、暑いだの、早く終われだの、さんざん悪者扱いされるという、なんとも可哀想な奴だ。

俺達はそんな奴に付き合い、夏の暑さに恋をし、好きにならなければ、こんな練習に耐えられるわけが無いのだ。俺はこう考えているから自然と夏も野球も大好きだし、練習にだって当然ながらいつも参加している・・・

夏と野球に恋、か。
けっ、俺としたことが・・・なんて女々しいこと考えてるんだ。

「では、シートノックに入る、いくぞー!」

部員達はオウ、と声を上げ、自分の守備位置につき、谷口が打ち上げた球を捕って、鮮やかなほどに素早く送球して行く。
俺はキャッチャーなので、眺めるだけ、という訳ではないけれど、眺めているとそれはそれは、夏の蒸し暑さに彩られて逆に涼しげにうつるものだ・・・

それにしても、さっきから谷口の様子がおかしい。打てているには打てているが、振るたび振るたび下を向いて、目を擦り、部員達にかける声はだんだん弱々しくなっていく。
「お・・・おい、谷口・・・?」
俺は谷口の肩を軽く叩き、谷口は顔をこちらに向けた。
「倉橋、なんだ・・・・おれ、なんとも・・・」
そう言った谷口の目は何処も見ていなかった。目が合わない。今の谷口は、ピントを合わせられない・・・
「谷口、お前熱中症じゃないのか?早く休め。ノックなら俺と横井で・・」
「だ、大丈夫さ、今はちょっとクラクラするだけ・・・・」
と言って、谷口は倒れてしまった。
彼が目の前で倒れる、という現象に、俺は少しの不安と、何処から来るのか、生理的な恐怖と怒りを覚えた。
「他の奴」のなら何回も見ているはずだ。前にも熱中症で倒れる奴なんて沢山いて、その度にギャーギャー騒ぐなんてことはなく、冷静に対処してきた。
が、今は、何故か違う。
「谷口っ!立てる・・・訳ないよな、ああ、どうしたらいいんだ・・・!」
そこに横井が駆けつける。
「倉橋、おれがノック代わるから、倉橋はキャプテンを日陰に運んで。一応、氷枕を当てて、様子みてよ。ヤバかったら保健室行くことにしてさ。」
俺は谷口を抱えてよく茂った常緑樹――――名前は知らない――――の下に出来た日陰に谷口を寝かせ、部室から大急ぎで氷枕と氷水を入れた洗面器を持ってくると、彼の身体の重要な部分(首とか、脇の下とか、足の付け根とかだな。)に氷枕を当て、しばらく待つ。
すると、谷口はゆっくりと目を開けて、
「ん・・・倉橋、おれ、どうなって・・・」
と小さな声で俺に問いかける。
「お前なぁ、倒れたんだよ。ノックは今横井がやってるから、ゆっくり休め。」
俺は谷口にコップに入れた水を差し出し、脱水症状があるから、飲むようにと促す。
谷口は水を一気に飲み干すと、ぼそぼそ何か言い始めた。
「やっぱ、昨日の徹夜が悪かったのかな・・・」
「て、徹夜って・・・お前、頑張るのもいいことだがそんなことしたから熱中症になったんだぞ。」
中間テストが近いのは周知の事実だ。しかし、野球部員達は朝の練習があるので、徹夜なんかしたらほぼダウンしてしまうだろう。全く、コイツは・・・
でも、そんな所が谷口らしいと、つくづく思う。
頑張って、頑張って、倒れても再び起き上がって、また努力し続ける。
それも、横なんか見ないで、淡々と、前だけ向いて・・・
「本当、お前はいつまでもいい子ちゃんなんだな、谷口!」
谷口はむっとした表情になった。
「倉橋っそれ、どういう意味なんだー!このっ!」
「ははははは、ただお前が色んなことで同じように頑張ってるのが可笑しくってな、はっはっはっ!」